桜 時/塔野夏子
桜の花が咲く 花が散る
花の影がわたしを斑に染める
晴れた空はうつろに息づいている
わたしにきららかな憂愁が降る
胸のうちをほの白い人の列がゆく
半透明に やや蒼ざめた横貌を見せて
葬列のようにゆっくりとゆく
何処から 何処へと
あのひとの気配を滲ませながら
桜の花が咲く 花が散る
花の影はわたしを斑に蝕む
何を忘れ 何を呼びさまし
わたしは今此処に立ちつくす
晴れた空はうっすらと微笑っている
わたしをきららかな憂愁が覆う
――葬列のようにゆっくりと
目のまえをほの白い人の列がゆく
一言も発さず こちらに目を向けることもなく
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