デイジーの頃/塔野夏子
 
墓地の芝生の上を
早春のあかるい風が吹き

ある白い墓標のかたわらで
小さなデイジーの花束が
微笑んでいた

そのことをくりかえし思いだす
私ひとりの影と
しずかな陽射しと

そのとき胸をよぎった祈りの言葉は
今もなお誰にも告げないままだ




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