まとまった消しクズが僕を責めるから/時雨
イライラしているときに数学はどうも相性が悪いらしい。
あぁ、また間違えたと心の中でぼやきながら消しゴムを掴む。
消えていく数字の隣で、小さな濡れた染み。
キミがさっきまで此処にいたという何よりの証拠。
零した涙の跡だけ残し、今キミは此処に居ない。
数学を教えて欲しいと、そう言ったのはキミだから、
僕の教え方でわからないからって、あんな風に言うことないじゃないか、と。
そう、僕が悪いんじゃない。
消しゴムにまとまった消しクズをゴミ箱に捨てようとして、
なかなか消しゴムから離れない消しクズにムキになる。
まるで、僕を責めるようだと。
チクショウ、と小さく呟く僕の手はいつのまにかケータイを掴む。
覚えきった番号をゆっくりと押して、
今、キミに聞こえているだろう着信音を口ずさむ、
仕方がないから、僕からキミが謝るきっかけをあげよう、と。
そう、僕が悪いんじゃない。
まとまった消しクズが僕を責めるから。
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