近代詩再読 村野四郎/岡部淳太郎
題の作品もある。それは「村野四郎には神がないと/ぼくの詩の友はいったが」という二行で始まっている)。だが、それゆえに、この詩人は戦後の混乱した時代になってようやく本領を発揮し、「秋の犬」や「鹿」といった名作を残しえたのではないだろうか。もちろんこの詩人の大きすぎる存在感を思う時、それだけでは語りえないものが残ってしまうのも確かなことだ。だが、この乾いた風が吹くような現代に生きる人々が村野四郎の詩から受け取る孤独の思いこそは、時を経ても色褪せないものであり、それは詩人からの大切な贈り物であるかのように思えてくるのだ。
(二〇〇六年六月〜八月)
前 次 グループ"近代詩再読"
編 削 Point(7)