近代詩再読 村野四郎/岡部淳太郎
スが/恋愛のように咲いたりしていた」「ガラスの眼球に桔梗の空間がうつっていた」などといった表現は、この詩の中心となる孤独感を見栄えよく際立たせるための道具であり、その企ては見事に成功している。
ここに至るまで、僕は「乾いた」という表現を何度も使用したが、僕の直観的な捉え方によれば、この詩人の詩の最大の特徴はそこにあると思われる。湿度の低い乾いた抒情。思えば、それは近代詩と戦後の現代詩をわかつ重要な要素のひとつであるように感じられる。非常におおざっぱな捉え方でお叱りを受けるかもしれないが、近代詩は湿度が高くねばついている。それに対し、現代詩は湿度が低く乾いている。そのような印象が僕の中にある。も
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