spring/大覚アキラ
ゆっくりとひらいてゆく 瞳の奥にある泉
深い水色の かなしみに似た 透明な水
ちいさな しかし 底の見えない泉
そのほとりで 小鳥たちは さえずります
悲鳴のような声で 切り裂くように
羽ばたきが 水面にかすかな波紋を作りました
すべての音が 消えうせてゆくように
何もかも どんどん遠ざかってゆくのです
わたしだけを置き去りにして なにもかもが
泉の水を 両手でそっとすくってみたら
わたしには わかることが何ひとつない
水の冷たさが そのことを教えてくれました
小鳥たちは もうこの泉のほとりには
二度と帰っては来ないでしょう
たとえこの先 幾度 春が訪れても
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