死神と私 −回転木馬−/蒸発王
 
怪訝な顔をしていると
死神は得意げに


“回転木馬は月夜が本番ですよ”

とのたまったのです



群雲に隠れた月は真夏に相応しく真っ赤に色づいていました
緑の間から生臭い夏の夜気が産まれ
その夜気が雲をおしのけて夜空に届こうとしています
首筋に膨れ上がった夏の息使いを感じて顔を上げると

ハチミツ色に輝く遊園地の光が見えてきました

遠くで光る観覧車の窓が
もう白鳥座を同化を果たして幸せそうに回っています
死神はまっすぐに回転木馬に向かいました
金色に輝く円盤に象牙色の木馬が走っています
恥ずかしがる私を
死神は無理矢理にも木馬に乗せると
木馬が回
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