死神と私 −旅に出るから−/蒸発王
浜
闇を抜けて小惑星の流氷を越えて
土星の輪の一端を自転車の車輪にして
天王星の遥か
一路オリオンの三ツ星を目指します
自転車のサドルにかけたラジオからは
死神がリクエストしてくれた私の好きな歌がずっと流れているのです
あてもない空想をしていたら
点滴の雫のリズムに合わせて
またも
うっつらと眠くなってきました
マブタの裏の空想で
小さな冥王星の上に乗った死神が
ゆっくりと腕を振っています
今だけは
この旅に出る時だけは
この名前で呼んでもいいでしょう?
“その名前で呼ばないで下さい”
なんて困った顔をしないで
この旅の帰りは
きっととても遅くなってしまうでしょうから
ね、
『いってきます』
『お父さん』
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