死神と私 −蒼い電車−/蒸発王
 
窓の向こうに先刻ぼやけて見えた人は
もう顔も覚えていない
死んでしまった両親だったと




やがて蒼い電車は消え
橙の電車は終着駅に着きました



電車を下りると
死神がいました
何時から居たのか鼻水をすすって見苦しい姿です

ああして
時々人は亡き人の思い出に惹かれて
向こう側へ行ってしまうそうです
私は両親の思い出が薄かったから無事だったのでしょう
死神は私の顔を見て安心したのか
少し泣きそうな顔をしていました


親の顔も覚えていない私ですが
この時の死神の顔は忘れたくないと思いました
とりあえず
鼻水をたらした死神にティッシュを渡すと

死神はティッシュの下からくぐもった声で


蒼い電車に出会ってはいけませんよ


と呟きました







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