死神と私 −蒼い電車−/蒸発王
窓の向こうに先刻ぼやけて見えた人は
もう顔も覚えていない
死んでしまった両親だったと
やがて蒼い電車は消え
橙の電車は終着駅に着きました
電車を下りると
死神がいました
何時から居たのか鼻水をすすって見苦しい姿です
ああして
時々人は亡き人の思い出に惹かれて
向こう側へ行ってしまうそうです
私は両親の思い出が薄かったから無事だったのでしょう
死神は私の顔を見て安心したのか
少し泣きそうな顔をしていました
親の顔も覚えていない私ですが
この時の死神の顔は忘れたくないと思いました
とりあえず
鼻水をたらした死神にティッシュを渡すと
死神はティッシュの下からくぐもった声で
蒼い電車に出会ってはいけませんよ
と呟きました
前 次 グループ"死神と私(完結)"
編 削 Point(11)