童話(空)/
たもつ
青い空でした
どこまでも澄んでいました
こちらの方が戸惑うくらいに
名前がありませんでした
形がありませんでした
ありがとう、も
言うことができませんでした
ごめんなさい、という言葉だけが
空のどこかに落ちて
小さな波紋を描くだけでした
でも、今ならやはり
ありがとう、という言葉が
一番相応しいと思えます
だから青い空の下
今日も辞書を引くのです
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