魔王と出逢った/イズミナツキ
 
路地でしくしく泣いてる人がいた
黒いマントに身を包んだ
綺麗な銀色の髪をした人だった
気になったので声をかけてみたら
彼は自分を魔王と名乗った

私は魔王を家へと招待した
縁側に座らせてお茶を出すと
魔王はそれを美味しそうに飲み
老人のように話し始めた

「神に好いてる人を取られた」

私が最初に驚いた事は
魔王にも恋心があるという事と
神とそんな奪い合いをしているという事
しかし路地で泣く事もないだろうに

「恋とは難しいものだな」

私もちょうど好きな人がいたので
その気持ちはすごくわかった
魔王だろうと神だろうと
恋はするものなんだと知った

「神は昔からああいう奴だった」

そうして魔王は
神の愚痴をこぼしはじめた
私はその愚痴に耳を傾けて
魔王の恋心を知った

「その気持ちわかるよ」

魔王と私は意気投合し
友達になった
恋に生きる儚さと
恋に苦しむ憂鬱を
溜息にして空へと放ち
一緒にお茶をすすった
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