魔王と出逢った(箱庭に在る恋)/イズミナツキ
どうやら魔王は
縁側が気に入ったらしい
老人みたいにお茶を啜り
箱庭を眺めて溜息を落としている
その光景は絵になりそうで
私はそんな絵の中に入り込んで
魔王の隣に座った
魔王の銀髪はとても綺麗だ
「よく手入れされている箱庭だ」
そんな感想を漏らしてお茶を一口
魔王が何を言いたいのか
私にはわからなかった
魔王は勝手に教えてくれた
「愛に箱庭に収まらない」
私に言ったのではない
ただ呟いただけだった
「己を箱庭に収めていてはいけない」
好きな人に想いを告げられない私
そんな私を励ましてくれているのか
ただ自分を励ましているのかはわからない
でも私は前者だと思いこんだ
「さて、一緒にテレビを見よう」
魔王に誘われたのは初めてだった
ちょっと嬉しくなった私は
差し伸べられた手を取って
ドキュメンタリー番組に涙した
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