照夜 ?/木立 悟
真夜中の雲が青白く立つ
月へ向かう手
空に融ける円柱
なにもない場所に
あらゆる場所に
立っている
木と地をつなぐ蝶
群れ集う黄色
ひとつの巨大な背の空が
遠い地の死と生を
羽のようにはばたかせる
すべてのものに耳があるのに
何も聞こえてはいない
光が 水が
ひとかけらずつ降りて来ては口をつぐむ
道がつづき やがて消えるところで
草の舟が
小さな声をたよりに流れゆく
花びらを追う手が水に触れ
空という空を川へ招く
夜は明るく
また暗く
己の場所へと向かうものを
独り歩きつづける火の声を
照らし出す
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