丘の空/塔野夏子
悪い子にはなれなかった
投げやりにほどいた長い髪を風になびかせ
夏雲が縺れあう丘の空の下
夢を歪(ひず)ませて
立ち尽くしていただけ
「君」がきっと街からここまでさがしに来てくれるなんて
甘えていたかっただけ
傷つきやすさを思わせぶりに見せつけて
花のようにあざやかにひるがえすように
その胸にわたしを刻めたならよかったのに
夕暮れが近づいてきて
風になびいていた長い髪も
だんだん重くなってきて
だけど心はなびきやまなくて
縺れあう夏雲の色もせつなくなって
いつまで立ち尽くしても
でも泣いたりもできなかった
「君」がさがしに来てくれないことなんて
わかりきっていた
甘えてみたかっただけ
ただ夢を歪ませて
暗くなってゆく丘の空の下
何処へも帰りたくないなんて
投げやりに呟いてみただけ
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