夏に至る/塔野夏子
夢が 微睡んでいる
緑の葉陰ものうく揺れる
やわらかな午後を
その瞼を 胸もとを つまさきを
うすい風が吹きすぎる
夢は そうして 自らを
夢みている あえかに甘やかに
その夢の水面(みなも)には うっとりと睡蓮が咲いている
夢よ せつないか 自らが夢であることが
こうして微睡みながら
自らに漂うことが
夢の口もとが かすかに微笑む
うすい風がまた吹きすぎる
水面に睡蓮は ただしずかに咲いている
緑の葉陰を肌に映し
夢は微睡んだまま 夏に至る
前 次 グループ"夏について"
編 削 Point(4)