晩夏の雨/
塔野夏子
濃密だった夏が
あっけなく身体からほどけてゆく
世界から色を消してゆくような
雨が降る
雨が降る
あの光きらめく汀を歩く
私の幻は幻のまま
それでも
夏はこの上なく夏であったと
青い頁に記して
いつのまにか其処に出現していた
静かな九月の扉に
ためいきとともに
そっと手をかける
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