韻律都市の夏/塔野夏子
 
韻律都市の夏へ
君が吹いたシャボン玉は
まるで水銀球のようで
それでいてふわふわと
街路を漂ってゆくのだった

それは
この都市の名うてのダンサーである
君が踊る姿にも似て

――正気の沙汰なんて
  そもそもありはしない
――あるのは
  どの狂気を選ぶのかということだけさ

そんな会話をしたような気もするが
君はさびしい笑みを浮かべたと見るまに
韻律都市の夏へ
君が吹いたシャボン玉よりはやく
溶けていってしまった

君が残した
うす青い筒の万華鏡の中で
踊る君の姿が さびしいその笑みが
いつまでも廻っているのかもしれなかった


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