山田くんと猫と私(僕)/仲本いすら
山田くん家の猫が 一度だけ
家出をしたことがあるという
「うちのみーちゃんは、とってもいいこなんだ!」
と笑っていた山田くんの顔は すごくひきつっていて
大丈夫、大丈夫と なだめる
あの子の声は 耳に入っていないみたいで
「うん、うん。」と
続けるばかり
ああ、もう、ほら
泣きそうになってるじゃないか
ねえ、山田くん
あの子おだいどころまで かけてっちゃったけど
大丈夫なの?
「うん、うん。」
ああもう!こら、山田!
そして僕は山田くんの手を引っ張って
りりり、と鳴る夜へ 駆け出していって
山田くんが、靴を履いていないのに
気づいたのは
その後、みーちゃんが
見つかったあとだった
よかったね、山田君
「みゃあ。」
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