砂浜に絵を描く(マリーノ超特急)/角田寿星
か
果てしないふたりの嬌声とか
そんなもんばかり俺とアンちゃんは眺めていた
ティールとノーグが朝はやく描いた絵は
風と波にあらわれて半分消えかかっている
アンちゃんがやおら立ち上がり
ようし オレも絵を描くぞう と
おおきな木切れをひっ掴み駆け出して派手にすっ転ぶ
義肢が絡まってガシャンとおおきな音をたてる
俺とティールとノーグは
大の字に突っ伏してるアンちゃんに駆け寄り
アンちゃんを中心にあたらしい絵を描きはじめた
冗談じゃねえよ
砂を噛みながら立ち上がるアンちゃんに
ノーグが大量の色砂をぶっかける
四人で
絵を描く
絵が仕上がった頃には
夜のとばりがすっかりおりて
俺たちの描きあげた絵を俺たちの誰もみることができない
波の音だけがきこえる 四人の息づかい
朝が来るまでに 海風と満ち潮が
俺たちの絵を完全に消しちまうんだろう
脚がいてえなあ
木切れを杖にしてアンちゃんが言う
オレは腕がいたいよ
俺が返す
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