ノート(果)/
木立 悟
小さな古い木の
根元近くの幹にあいた洞から
白く艶やかな瓜のようなものが
ゆっくりと外へ押し出されている
周りに溶け残る雪から
雪と同じ色をした蟻に似た虫が
ぽつりぽつりと這い出てくる
瓜がすべて押し出されると
木の洞からは兎のような顔がのぞく
光がまぶしく雪に反射して
雪色の虫たちを囲んでゆく
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