キリエル人(きりえるびと・ウルトラマンティガ)/角田寿星
負け惜しみだった。
邪神ガダノゾーアに敗れ石像に還ったティガの躰に閉じ込められた
マドカ・ダイゴの精神に向けて。
いくつかの選択肢があった。キリエル人には人類の存亡より大切な
ものがあった。邪神との闘いは彼らに勝利したウルトラマンティガ――
人類に総てを託した。キリエル人は自らに宿るけして矮小ではない
光を愛おしく両手に摂りいつまでも視つめやがて永い眠りに就いた。
そのキリエル人は目醒めた。邪神ガダノゾーアは斃れティガは去った。
人類が未だ存在するのかさえ訝しい。時空の狭間からいつしか視た
光景が広がる。キリエル人の世界を地獄と称するならばこの惑星もまた
地獄と呼びはしないのか。地獄に産まれ活き逝くことがすべての
いのちの宿命であるのならば――いや。 キリエル人には為すべき事は
予め解っていた。
振り返ることなく歩いて往く。彼のゲームを再び執り行うために。
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