入れ物/アンテ
 
キくんも待ってただけ
女の子は車椅子の向きをくるりと変えて
廊下を先へ行ってしまった
お礼を言う間もない
ぼくの気管が良くなったのも
ひょっとしたらって
訊きたかったのだと思い出しても後の祭りだ

入れ物をしっかり密封すれば
中身を詰めかえる必要もないし
量を気にすることもない
ああ だから
ぼくは砂時計が好きなんだ
時々さかさまにして
さらさら さら
中身があることをたしかめる
ぼくの心のなかにも丘があって
砂時計が時間を刻んでいるのだろう
ぼくが助かった時も
やっぱりあの二人が
ぼくの砂時計を
ぼくの人生を

顔を上げると
ヒナコちゃんが立ってい
[次のページ]
   グループ"メリーゴーラウンド"
   Point(3)