記憶/アンテ
おとうさんに野球のチケットを取ってもらって
無謀にも
両親と彼女の四人で
スタジアムに足を運んだことがある
三回までしか見られなかったけれど
贔屓のチームが打線爆発で
おとうさんは上機嫌だった
いつも彼女に感謝しているおかあさん
いつも変なことを言って彼女を笑わせるおとうさん
ひーちゃん ひーちゃん って
もうすぐ高校生なのに
まるで子供扱い
怖いこと
彼女の名前を思い出せないまま
離れてしまうこと
夕方
彼女が学校のあとに来てくれるまでは
しっかり酸素を吸入した状態で
本を読んだり宿題をする
彼女は図書委員で
いろいろと本を借りてきてくれるので
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