解した眼球に湊でるピアニシモ/士狼(銀)
 
豚の目を解(バラ)した

肉付きの眼球が二十個 並んで此方をみている
父にもらった手術用の手袋を嵌めて 一つ 掌に置く
冷たかった
どこまでも 質感は在った

メスによく似た鋏を 突き立てる
『視神経は残しておくように』
生物教師の声が 無情にも 響く
誰も 静寂に不満は無いのだ

ガラス体の感触
盲斑から流れていた血脈
色素体にまみれた 中指の腹
水晶体

一度 触れてみたかった細胞郡(パーツ)

意味が無いことは分かっていた
けれど その美しい球体を持ち帰った
水に浸して 腐敗を早めた
三日目の深夜 気付けば崩れ去っていた
潰すと 黄色がかった液体になった
つまらなくなって
ごみ箱へ フリースローを決めてみた

思い出している 合掌して捨てた左目を
バラバラになって 異臭を放つ目を
嬉々として解剖した 十一人と僕 を

瞳はとても綺麗だった
僕は とても醜かった

原形を失った眼球が 夢に出てくるのだ


もう二年も 夢なんか覚えていないのに
  グループ"獣化"
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