有刺鉄線の鴉/士狼(銀)
 
幼い頃
僕の左手は よく包帯に抱かれていた

今よりもっと 周りよりずっと
何にも関心が無かった ±ゼロの絶対零度
凍った心に響くのは 痛みだけ

立ち入り禁止の野原の前で
有刺鉄線に 左手で吊られた
温かい夕日が眩しすぎて 紫の雲に
誘拐されたかった
滲んだ血と痛み
それだけが 生きている証だった

医者である父に何度 諭されても
僕は 有刺鉄線に吊られた 

きらきらと輝いて
どこまでも赤かった 灯火

傷痕すら残らなかった 淡い証明


   グループ"獣化"
   Point(9)