びわの実/暗闇れもん
 
縁側に腰掛けて
びわの実をとりだしては
おいしそうなものだけを隣の誰かに渡していた
私には見ることができない誰かに話しかけ
少し怒ったり笑ったり
私の方は決して見ない
早くに亡くなった私の祖父と
つい最近死んでしまった犬のクロに
祖母は話しているのだろう
決してこちら側には目を向けない


喧嘩ばかりしていた祖母と祖父の記憶
クロには渡すはずのない
皮を剥いたびわの実
遠い記憶が私を包み込み
泣き崩れた


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