難破した船の来歴/岡部淳太郎
 
、見知らぬ奥へと入っていった。操舵室
には前時代の海図とコンパス、それと航海日
誌があった。埃の積もる表紙をめくって、彼
は読んだ。


  われわれは出発した。何の当てもない、
  ただ出発のための出発。

  島の原住民はわれわれのことを知らない
  し、知りたいとも思わないらしい。無名
  の敵意の中、われわれは退散した。

  浜の岩場の陰で焚き火をする。実に優雅
  なり。

  北極星の位置がわからなくなった。これ
  では航海はおぼつかない。そもそもわれ
  われは何のために航海をしているのか。
  ただ、航海のための航海、それだけであ
  っ
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  グループ"散文詩"
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