二十年の季節の物語/佐々宝砂
 
と最初は思った。秋の嵐に出くわすまではそう思っていた。夏にも嵐はあったが秋の嵐はたちが悪い。一季と半分を生きた僕にこどもが生まれたときは本当にひどい嵐で産婆もきてくれず大苦労して僕がとりあげたが僕の妻は死んだ。あの子ももう半季生きた。一季生きれば成人だ。僕も年をとるわけだ。


3.父(秋の半ばの生まれ)

秋生まれの俺はまだこの土地が暖かかったことを覚えている。いまここは厳寒で雪と氷に閉ざされているけれど。もうこの冬は終わらないのではないかとも思うのだけれど。それでも俺はこの真冬の真っ白な世界で君に会うことができた。冬にこどもを育てるのは大変だと言われて俺たちはまだこどもを作らないでい
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