メモ/はるな
時々、手に負えないところまで来てしまった、と思う。ふしぎと軽い気持ちで、すかすかした、他人を見下ろすような安全な心持で。
室内と、外気の掛け離れた温度がそうさせるのかもしれない。夏の盛り、あるいは冬のただなか、世界のあちこちが境目じみて、乖離を誘うから。さまざまな手段で、自分を生活に舫おうとする、暑さで縄が焼き切れる。行って帰ってくる、それだけのことを、簡単に思えないときがある。
外は暑すぎる、アイスティは冷たすぎ、濡らした指はすぐ乾く、体は溶けないし、なかなか日は暮れないし。何もかももう充分です、でも、むすめの長い髪を編んであげなきゃならない。まだひとりで眠れない彼女のために、でたらめを楽しく歌う必要がある。いくつもの嘘を編みこみながら、手に負えないところまで来てしまったと思う。
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