ひとでなし/墨晶
 
         - Der Traum, wieder


一瞬で、どんな夢だったのか忘れてしまうが

胸が潰れるような氣持ちのさなか目覺める

かたちのないもの

かんがえにならなかったもの

ことばにならなかったもの

いつもそれらに訣(わか)れを云えなかったことは

もうこれまで多く、大切だったものを

とうになくしてしまっている筈なのに

わたしにとって大事なものがまた

それが何だったのかを氣付かせないように

わたしの元を立ち去って行ったかのようで

ひたすら悔いとなって

身勝手な痛みのようにしばらく心肺に取り憑く

だからいつも寢牀(ねどこ)で

半身を起こしたまま放心している
 
 
   グループ"?奏曲集"
   Point(6)