黙祷 三十秒思考/虹村 凌
「黙祷」
一瞬でざわめく声は途絶え
耳に煩い程の静寂に包まれる
この時を待っていたんだ
***
「しらかんば」
呟いた唇からは
ただただ灰色の煙が零れるだけだった
既に頭の半分
右手
左足
右脇腹を失い
尻尾は燃え尽きてしまった
力無く垂れ下がった日本刀は
輝きを失い
鈍い
灰色の光を
気怠そうに垂らせていた
***
黙祷
祈りを捧げる奴らの中に切り込む
***
御父様
御母様
生まれてきてごめんなさい
私は存在してしまったのです
気が違ってしまったのです
天皇陛下万歳
経済大国万歳
全ての霊魂に捧げる黙祷を
私は
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