嘘の国/ふるる
 
その国
国なのに王を持たず
恋人もいない

波打ちぎわが逃げ続けるので
海は憧れの的

         つぐみの子が口を開け
         「夢が叶った」
         と言う

夕。
入日の激しい音のする
坂道を
帰宅人が歩く
ジャコメッティの
輪郭のないブロンズ

          夏。
          氷を削る
          シャリシャリ言う扱いやすい音
          の方を見れば
          言葉が跡形もなく
          咀嚼されてゆく途中だ

春風。
くちた肉の匂いが運ばれる
その肉
肉な
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