幽冥界のヨラン(一)/朧月夜
盗賊ヨランでは、幽冥界の一つ、カジガンデにも行ったことがる。
幽冥界は、天国とも地獄とも、現世とも異なる異界である。
そのことは、酒場でのヨランの恰好の話の種となった。
では、ヨランは何をしたのか? 実は何もしなかったのである。
カジガンデには、巨大な茸のような樹木が林立していた。
そして、カマキリに似た巨獣が闊歩していた。
それは、現世からの来訪者を捕らえるためのものであったのだろう。
盗賊ヨランは慎重にも慎重を期して行動した。
盗賊ヨランは、たしかに、カジガンデの中央に次元跳躍したはずだった。
しかし、そこには何もなかった。人間も亜人種もいなかった。
だが、そこには一つの神殿があった。デーモンが立てた神殿である。
盗賊ヨランはそこに忍び込んだ。巨大なカマキリに見つからないように。
そこには、様々な色彩の宝石が、柱や壁に飾られていた。
盗賊ヨランは、その中の一つでも盗み出そうと思った。
前 次 グループ"クールラントの詩"
編 削 Point(1)