ファシブルの国のエインスベル(二)/朧月夜
 
「いよいよ明日だな」と、アイソニアの騎士が言った。
その翌々日は、ミーガンテの戴冠十年式典の日だったのである。それまでには、
何としても、エインスベルの母マリアノスを王座に返り咲かせる必要があった。
「アイソニアの騎士よ。すべては万事うまくゆく。あとは時間のみが頼りだ」

エインスベルは淡々と言った。
「しかし、どうやってミーガンテ・アリア・ガルデを倒すのだ?」
アイソニアの騎士は問う。
「心配ない。作戦はすでに整えているのだ。そのための下準備もしてある」

アイソニアの騎士は、この期に及んでも懐疑的であった。
五百人からなるファシブルの国の兵隊たちを、二十八名の戦士で倒せるのだろうか。
しかし、エインスベルは破顔した。

「一瞬で得たものは、一瞬で崩壊する」
それは、ミーガンテ・アリア・ガルデに最も当てはまる言葉だった。
「ファシブルの国は、再びマリアノス・アリア・ガルデが取り戻すのだ」
   グループ"クールラントの詩"
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