戦士エイソスとヤゴンの竜(一)/朧月夜
戦士エイソスは一人でヤゴンの竜に立ち向かおうとしていた。
これが、自分に課せられた使命の一つだと思っていたのである。
何よりも、ヤゴンの竜を倒さなければ、クシュリーの愛情が得られない。
戦士エイソスは、自分の一命に替えても、ヤゴンの竜を倒す心づもりだった。
まず、戦士エイソスはクールラントの北東にあるヤゴスフィアとへ向かう。
そこがヤゴンの竜の生息地だったのである。
ヤゴンの竜は、天界と地界とを結びつける存在だとも言われていた。
いわく、聖霊タパスの使いだとも。
ヤゴンの竜を退治することは、現世に生きる人々にとっては誉である。
戦士エイソスも、その名に似つかわしい栄誉を受けるはずであった。
しかし……しかしである、その業績に私情が加われば、別の話である。
戦士エイソスは恋愛のためにヤゴンの竜を討とうとしていた、
そのような噂話が伝われば、戦士エイソスの勇名は地に落ちるはずであった。
しかし、それには代えられないものが、そこにはあったのである。
前 次 グループ"クールラントの詩"
編 削 Point(1)