それぞれの戦い(四)/朧月夜
 
乱戦の戦場では、戦術とともに戦略も大切である。
どこでどの部隊と落ち合うか、そして、どの方面に進軍するか。
アースランテの軍団長エリス・ガザンデは有能だった。
つねに、次の一歩のことを考えている。

アイソニアの騎士もそれに従うのみだった。
「戦士エイソスよ、お前の相手だけをしているわけにはいかないのだ」
「待て、アイソニアの騎士よ。よもや、逃げるというのか?」
「逃げるのではない。これが戦略というものだ」

アイソニアの騎士は、魔剣ゾフィアスから、砂塵の魔法を繰り出して、
戦士エイソスの視界を奪った。その間に、騎馬を駆って転進する。
戦士エイソスには、アイソニアの騎士の側近の一人が切りかかった。

「我々は、誇り高いアースランテの軍団。クールラントなどに負けはせぬ!」
その兵士は叫んだ。戦士エイソスは舌打ちをする。
「アイソニアの騎士を取り逃がしてしまった。軍団長も見つからないというのに」
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