盗賊ヨランの旅(十一)/朧月夜
「どうやらお前は、わたしの知らないことを知っているようだな」
エイミノアが静かな声でヨランに話しかける。
二人はすでに、夜の森に向かって歩き始めていた。
もちろん、野営の跡は消しておく。誰が疑心を抱かないとも限らないからだ。
「わたしは先ほど、急いては事を仕損じる、と言いました。
グルレッケの群れのなかに、人間が混じっていたことに、気が付きましたか?」
ヨランはじっとりとした目で、エイミノアを見つめた。
エイミノアはごくりと唾を飲む。「なんだと?」
「あれは、わたしどもに放たれた刺客でしょう。
わたしたちの行動は、祭祀クーラスには筒抜けになっていると見て、
間違いありません。しかし、わたしに一つの考えがあるのです」
「刺客がいるだと? それならば、余計に道を急がねばならないではないか!」
「いいえ、クーラスはエインスベル様を手にかけたりはしません。
なぜなら、その前にわたしたちがエインスベル様を助けるのですから」
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