オスファハンと盗賊ヨラン(三)/朧月夜
「ヒスフェル聖国でも、エインスベル様は戦犯なのだな?」
エイミノアが囁いた。ヨランはゆっくりとうなづく。
「それで、お前はいったい何をしようとしているのか?」
「それは、時が来れば分かります。エイミノア様……
隠れていてください。窓の向こうに人影があります」
「承知した」そう言って、エイミノアは建物の外壁に身を寄せる。
「しかし、いつまでもこうしているわけにはいかないぞ」
「オスファハン様は、昼食を一人でお食べになります。その時が機会です」
「なるほどな。いかに巧妙な魔導士と言えども、プライバシーは必要ということか」
「そうです。オスファハン様は驚くほどに小食ですがね……」
(やはり、こいつは我らの知らないことを知っている)エイミノアは唸った。
盗賊ヨランがこんこんと窓を叩く。執務室の中にいた、オスファハンが振り向いた。
「そこにいるのは、誰か? 刺客ごときに我は倒せぬぞ!」
オスファハンが静かな警戒心に満ちた声を発する。その手は、昼食につけられたままだ。
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