地下室のヨラン(五)/朧月夜
 
「ご覧ください。これは木切れではありません。燐寸と言うものです」
ヨランは静かに言葉を続ける。
「燐寸? それは何かの魔道具なのか?」
「いいえ、魔道具ではありません。科学の道具です」

「科学? それはいかなるものなのか?」エイミノアが問いかける。
「はるか昔に、廃れた文明のことです。
 わたしは、この邸宅でこれを見つけました」
「なんと? この邸宅には、はるか以前の文明の遺物があるというのか?」

「はい、左様です、エイミノア様。……ヒスフェル聖国には、
 失われた過去の文明の遺産が残されているのです。
 魔法素子も、その一つでしょう」ヨランは厳かに述べる。
 
「なんと、魔法素子にはそんな秘密があるのか?」エイミノアは驚愕した。
「わたくしも、全てを知っているわけではありません。しかし、
 この旅の途上で、魔法素子の秘密の一端は明らかになるかも知れません」
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