ハーレスケイドへの旅(三)/朧月夜
 
「これは、ヨラン……」エイミノアは息を呑みながら、言った。
「あの牢獄の床に描かれていた文様なのか? わたしは気づかなかったが」
エイミノアは、焦っていた。この、エインスベル様の一介の従者、
臆病者のドワーフに何が出来るのかと?

(エインスベル様、傭兵団長であるわたしに知らないことなど……
 あってはならぬ)と。しかし、
世の理とは、あってはならないものこそ、あるようにと向かわせるものなのである。
エイミノアの自負、そして、アイソニアの騎士の自負すら、そこには介在しえないもののようのだった。

アイソニアの騎士の私邸の、滑(すべ)らかな床がふいに鈍い光を帯びる。
それは、次元跳躍の一つの兆候だった。盗賊ヨランは、世の理を超える……、
エイミノアとアイソニアの騎士、双方がその瞬間に思った。

そして次の瞬間、三人は飛翔していた。まさに、幽冥界ハーレスケイドへと。
「……上手く行きましたね。わたしにとっても予想外でしたが」と、ヨラン。
「まったくお前という奴は……。それで、ここは一体どこなのだ?」
   グループ"クールラントの詩"
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