ヨランの挑戦(三)/朧月夜
 
周りを見回せば、古代神殿のような柱。そして、空を見上げるような建物。
アイソニアの騎士は、(ここは我らが知っているような世界ではない?)
と疑った。それは、エイミノアにしても同じことである。人為的な幽冥界、
そんな言説とは裏腹に、幽冥界ハーレスケイドは、いかにも自然な世界であるように思えた。

だが、そこは自分たちの知っている世界とはどこかが違っていた。
空は広く、どこまでも透き通っている。他の幽冥界や地獄のような、
おどろおどろしい景色も広がってはいない。すべては日常の延長かと見まごうほどに。

しかし、「これ」とは言い表せないような異常も、そこにはあったのである。
天から降ってくるような、星空。それは、昼間でも燦然ときらめいていた。
そして、真冬の北極圏に吹くような強い風……そこは、まさしく異界であった。

盗賊ヨランが、鈍く開いていた口を閉じる。アイソニアの騎士も、エイミノアも……。
「俺たちは、いったいどこへとやってきたのだ?」アイソニアの騎士の脳裏をかすめ、
再び口先をついて出たのは、そんな、初めてではない疑念だった。
   グループ"クールラントの詩"
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