薄明の中で(七)/朧月夜
場面は変わって、ここはクールラント行政府の、執務室である。
祭祀クーラスは、執務机に座っていた。その向かいには、フランキスが立っている。
「昨夜、……いや、今日の未明だな。ある者から一つの提案があった」
クーラスは重い口調で切り出す。
「それは、一体いかなることでしょうか?」フランキスも、同様に重い調子で尋ねた。
「エインスベルに関することだ。いや、そうではあるまい。
アイソニアの騎士と、戦士エイソスに関することだ」
「アイソニアの騎士? 奴をまたこのクールラントに引き入れるということですか?」
フランキスは、明らかに気色ばんでいた。アイソニアの騎士は彼の宿敵なのである。
「そうではない。エインスベルとアイソニアの騎士を殺すための算段だ。
エインスベルの死刑が執行される前に、我らは今後の憂慮の目を摘んでおかねばならない」
「そうでしたか。ですが、そのために何が出来るというのでしょう。
エインスベルの裁判は三日後です。その死は確実なものと言って良いのでは?」
「司法院にも、エインスベル派はいる。エインスベルの死は確実なものではない」
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