世界の真実(五)/朧月夜
「ふん。世界だとか何だとか、そんなことが世迷言であるのは、
俺の経験が教えている。お前は、女だ。男の声を発している女だ。
俺は、その影に隠れた事実があるなどと、信じはしない。
化けの皮をはがすことだ、女よ!」アイソニアの騎士は、怒りに駆られるままに言った。
しかし、彼の勢いはすぐさま押し止められた。
「これを見ても、まだそう思うか?」──そう、オーマルは言うのだった。
いや、オーマルではない。エランドルだ。かつは、この世の破壊神、盗掘王、
様々な言葉が彼を彩った。しかし、彼は今や一個の「死者」である。
……それも違う。彼は一個の霊的な存在であった。彼が手を一振りすれば、地が揺らぐ。
天が崩れる。──彼の思いは、この世界が見る夢である。そう願えば、であるが。
「あれは……、エインスンベル!」それは、今も牢獄に囚われているエインスベルの姿だった。
それが、中空に映像のように映し出されている。
呼吸するエインスベル。その息遣いすら、手に取るように感じられるほどだった。
「お前は何者だ!」アイソニアの騎士が、剣の柄に手をかけた。
前 次 グループ"クールラントの詩"
編 削 Point(1)