クーゲンドルにて(三)/朧月夜
「さあ、ドラゴンたちが来ました」オーマルは上空を見つめて言った。
「龍どもか! 一匹残らず殲滅してくれる!」
アイソニアの騎士は旌旗堂堂と声音を上げた。だが、オーマルは意義を唱える。
「いけません!」──甲高い声が、中空に響く。
「今、わたしたちは戦うべきでしょうか?」
「決まっている。敵とは屠るべきものだ。でなければ、我らが死んでしまう」
その答えに対して、オーマルは沈黙を貫いた。
そして、空の彼方を見つめ続けている。千のドラゴンが羽ばたく空を。
「まあ、いかにせよ、わたしたちは対処せざるを得ません」ヨランが言った。
「皆さま、わたしは今ひとつの真実をお見せしましょう。わたしの真の姿を」
……そう言うとともに、オーマルは一頭のドラゴンへと姿を変えた。
「わたしは、龍族と人間との間(あい)の子。ドラグネイアスです」
一行は、呆気にとられた。そこに、赭々とした色の、一頭のドラゴンが現れたのである。
「我々はどこへ……?」と、ヨランは呟いた。ハーレスケイドとは、まさに異界であったのである。
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