クーゲンドルにて(十)/朧月夜
「はい。それは正しく戦いです。しかも、誤りでありました」
「謝罪をする必要はない。我々ドラゴンは、意識共有体である。
ひとつの個体が、ひとつの意識を持っているわけではない。
例え一頭が死んでも、全体の意識はさほど変わらない」
「意識共有体?」ヨランが尋ねる。
「そうだ。群れ全体でひとつの心を持ち、社会を形作っている」
「ドラゴンに社会があるとは……」
「知っているであろう? ドラゴンとは人間が作り出したものだ。
当初、ドラゴンたちは今のような姿を持ってはいなかった。
より人間に近い姿をしていたのだ。しかし、わたしは龍族の血が濃い。
龍人としてよりも、ドラゴンとしてその生を生きているのだ」
「そのあなたが、わたしたちの前に現れたのは、何のためです?」
「エランドル・エゴリスに引き合わせるためである。すでに分かっているであろう?」
「オスファハン様も……あなたに会ったのですか?」
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