脱出(三)/朧月夜
 
エインスベルの前に、いくつもの屍が積み重なった。
それは、彼女が望むところではなかったが……仕方がないのである。
彼女は、クールラントの未来を背負った身、祭祀クーラスとは、
異なる道を歩むべき存在だった。そして、兵士たちとは……

常に、国の行く末に身を任せるものである。
エインスベル自身すら、クールラントという一国の兵士だった。
そこに、何をか迷っている猶予があっただろうか?
数日のうちには処刑される身、というのを、エインスベルも十分に心得ていた。

「ヨランよ。ここから先も、敵が出てくると思うか?」
「いいえ、その気配はありません。今こそ、エインスベル様、
 この牢獄を脱する時です。祭祀クーラスは、何とかなりますでしょう」

「そう願いたいものだな。アイソニアの騎士よ、あなたは無事か?」
「俺も無事だ、エインスベルよ。この程度の手合い、俺の敵ではない」
「良かった。今、この監獄の虹の魔法石は消えた。さて、どうするか……」
   グループ"クールラントの詩"
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