ラゴスの動向(三)/朧月夜
ラゴスの議会は、ケンパ・ハルラージャという有力者が治めていた。
ケンパ・ハルラージャは、軍務大臣であるシュランク・エルベとは、
犬猿の仲である。一方が西と言えば、他方は東と応える。
アウゼルは、どちらの意見にも一理がある、と考えていた。
「アースランテは、ファシブルに対して戦端を開きました。
これは由々しき事態です。アースランテの復権を許してはなりません」
シュランク・エルベがそう言えば、ケンパは次のように答えた。
「果たしてそうですかな? アースランテの今回の一件は、悪あがきにすぎません」
ケンパは続ける。「小事にとらわれて、大局を見逃すべきではありません。
現在、アースランテは、ラゴス、クールラント、ファシブルによって
分割統治されています。これが最善の策なのです。そして、継続されるべき方針です」
「私は何も、アースランテを滅ぼせと言っているのではない。小事が大事を動かす、
そういうこともあるのではないかと、警鐘を鳴らしたいのです」
シュランクは考え深げに言った。しかし、心ではすでに、戦争は起こっていると思っていた。
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