河童伝/板谷みきょう
 
様に会いに行ったって言うべしゃ。」
ひしめき合って、声をひそめて囁いているその時に
ドッカ―ン!ガラガラガラガラー?
そりゃあ、でっかい雷がひとつ。

「河童三郎の命と引き換えに、今年より、ぬらくら川は、氾濫させぬ。」
割れんばかりの龍神の声に、
村人、部落の者、議員さんやら村長までもが一心に唱えた。
「なむ、なむ、なむ、なむ…」
途端、雲は去り夕暮れの空に星がひとつ。

「ありゃあきっと、三郎沼の河童だ。星になったんだわ。そうだべさ。」
爺と婆は、涙を浮かべて呟いた。

その呟きは、またたく間に伝わり、
誰からともなく輝いている星に手を合わせた。

その頃、三郎の体は、深い深い山奥で、
誰にも知られずに腐乱し、
悪臭を放っておった。

   グループ"童話モドキ"
   Point(1)