慈雨と沐雨/道草次郎
 
雨のように大地が
海の端に
こぼれていく

濃霧を裏返すと
ヤドカリの心臓が
宝石になる

渡り鳥たちは
スクリーンのなか
黒色(こくしょく)の雨に打たれる

年老いた青空は
十二単(じゅうにひとえ)の感情で
虹を胚胎し

逝き急ぐ水は
断崖のランス
ポセイドンの槍

彗星のように
さめながら
永遠(とわ)は横なぐりのあめ

   グループ"幻想の詩群"
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