塚 より/沼谷香澄
 
看板のペンキが文字の型どおり剥げているから読める。牛乳

げに量りがたきは寿命・生命力・必要とされる度合い(書籍の)

芝桜模様に透ける衝立の向こうに顧客管理簿が咲く

寝る前に読んだ雑誌と知り合いがすぐ夢に出るつまらない春

青空が善意悪意を半々に広げてすこし濁り始める

生きている骨は赤みを帯びている鉄器が土を染める前から

人間の骨が同時に残るには何か理由が必要なのだ

深海の珊瑚の幹の赤色は千年後にも赤いだろうか

咲き出した桜の上に降る雪も名づけられよう近い将来

ララバイのリクエスト、急に難しくなって。困った。歌詞を聞き書く

初出:Tongue第6号 2004年3月29日 原文縦書

   グループ"個人誌「Tongue」収録作"
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